Blog

ブログ

データマネジメント

餃子消費日本一ランキングに異変あり

このブログでも昨年4回にわたって取り上げた餃子消費都市日本一ランキングですが、今年も2月に総務省から2023年の家計調査の集計結果として発表されました。長年、宇都宮市と浜松市とで争われ、最近は宮崎市を加えた三つ巴の闘いとなっていた餃子日本一ですが、今回(2023年)少し変化が見られました。まずはコロナ禍であった過去3年の結果を振り返ってみましょう。

2020年
1位 浜松市  3,765(0.40%)
2位 宇都宮市 3,694(0.39%)
3位 宮崎市  3,669(0.41%)
全国平均 2,133(0.22%)

2021年
1位 宮崎市  4,184(0.47%)
2位 浜松市  3,728(0.39%)
3位 宇都宮市 3,129(0.33%)
全国平均 2,093(0.22%)

2022年
1位 宮崎市  4,053(0.45%)
2位 宇都宮市 3,763(0.37%)
3位 浜松市  3,434(0.36%)
全国平均 2,017(0.21%)

※カッコ内は全食品の支出に対する餃子の割合

この3年間は宮崎市の台頭とこれまでの2強都市の落ち着きが大きな傾向でした。それがコロナも概ね明けた2023年はどのような結果になったでしょうか。

2023年
1位 浜松市  4,041(0.38%)
2位 宮崎市  3,498(0.38%)
3位 宇都宮市 3,199(0.29%)
全国平均 1,982(0.19%)

※2位・3位の数値が報道と1円違いますが、総務省WEBサイトからダウンロードしたデータを引用しています。

浜松市が3年ぶりに王者を奪還しました。この結果を筆者は、安定の浜松、息切れの宮崎、諦念の宇都宮と見ました。このランキングのムーブメントに関与しているかたがたの名誉のためにおことわりしておくと、「息切れ」「諦念」というのは各市関係者のマインドのことではなく、数字がそれを示している、ということです。まず、浜松市が政令指定都市になってこのランキングに参戦した2008年以降の3市の消費額の推移を見てみましょう。

宇都宮・浜松の激闘が2017~2018年に落ち着きを見せ、浜松市は3千円台後半を安定的に推移するようなっていました。対して宇都宮市は2019年をピーク(4,358円)に上がり下がりを繰り返しながら下降線を辿っています。宮崎市は2020年に飛躍を見せ、2021・2022年に4千円台を打ち出し連続日本一に輝きましたが、今回は2020年の記録も下回っています。安定の浜松はこのグラフだけでもご理解いただける思いますが、なぜ息切れの宮崎、諦念の宇都宮なのか。3市の餃子の消費率の推移を見てみましょう。

報道等では「購入頻度」と紹介されることが多いですが、食費に占める餃子の割合です。浜松市は支出額同様安定して推移しており、2023年も支出の割合は目立って増えていないにも関わらず額は600円も増えて4千円台を打ち出しています。宮崎市は割合は浜松市と同率1位ですが2連続1位だった前年から大幅に落とし(0.45%→0.38%)、額も前年から500円も下げてしまっています。宇都宮市の下落傾向は更にひどく、額・率ともに過去ワーストです。
同じ支出率であるにも関わらず浜松市と宮崎市とで500円もの差があるのはどういうことなのでしょうか。次に3市の全食費の推移を見てみましょう。

2022年から上がり始めた食費が2023年はさらに伸びを見せています。近年の物価上昇の影響とみていいでしょう。浜松市と宇都宮市は全国平均と同じ傾向にあり、浜松市の伸びは消費量の増加というよりは物価上昇にそのまま連動した結果といえます。対して宮崎市は全国平均よりも食費が10万円低く上昇率もやや鈍くあります。その状況で餃子の消費額を減らしているということは消費量も減っているということを差します。前2年のがむしゃらな頑張りと比較するとペース配分を落としたかのように見えてしまいます。宇都宮市に関しては浜松市とほぼ同じ消費条件でこれだけ負けてしまっていると、先頭集団から一歩下がった位置に付けたと言わざるを得ません。

浜松市の安定感については、昨年のブログ「餃子日本一と家計調査④(餃子三国志編)」でご紹介したように調理食品の消費額が全国2位という裏付けがあるからと言えます。因みに2023年の52都市調理食品消費額ランキングは1位東京都区部、2位浜松市、3位さいたま市で、宇都宮市は7位、宮崎市は27位です。ついでにご紹介しますと2023年の食料品消費額は8位宇都宮市、18位浜松市、50位宮崎市の順で、調理食品消費額で浜松市は際立っているのです。

宮崎市を「息切れ」と評したのは、ポテンシャルは高いものの通常の餃子消費ペースは浜松と同程度であり、今後物価も加味した消費額の差を埋めて行くのは並大抵の食生活ペースでは難しいと判断したからです。
宇都宮の「諦念」というのは、このランキングを世に知らしめた元祖的存在ではあるものの、元々”宇都宮ぎょうざ”とは外食がメインであり、調理食品を家庭で食べるのは派生的な習慣であるという本来の姿に戻ったように見えることを評しています。勿論、かつて6,133円(2010年)という大記録を叩き出したことのあるレジェンドが再び目を覚まさないとは限りませんが、おそらくは家計調査ランキング界のご意見番として推移を見守る立場になっていくのではないでしょうか。

家計調査による餃子消費ランキングはこれからしばらく落ち着きを見せるかもしれません。しかし、このムーブメントをきっかけに新たなジャンル(実際は都市ですが)が名乗りを上げてきているようです。次回以降、それらニューカマーについて探って行きたいと思います。