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餃子日本一と家計調査②(仁義なきレギュレーション編)

前回、長らく餃子の街の王者として君臨してきた宇都宮市に対して、挑戦者浜松市登場前夜の2007年までを書きましたが、2008年以降どのような激闘が繰り広げられたのでしょうか。その前に家計調査にについてもう少し説明を加えたいと思います。

家計調査は5年に一度の国勢調査のような全数調査ではなく標本調査です。毎月全国民に対して調査し続けるのは現実的ではないため、9,000世帯を標本(サンプル)として調査しています。統計について筆者は全くの門外漢で、標本サイズや標本誤差について詳しく説明するのは任ではないので省きますが、9,000世帯あれば国民の家計収支を知る上で大きな誤差が生じる可能性は少ないと考えられます。
ただ、我々が注目している都市別の集計については状況が少し異なってきます。家計調査は層化3段抽出法というやり方でで調査対象世帯を選びますが、第1段めの市町村については、都道府県庁所在市及び大都市、人口5万以上の市、人口5万未満の市及び町村、という階層を各都道府県ごとに定め、その各階層市町村に適切な世帯数を割り当てます。第1段め階層の選定として都道府県庁所在市と政令市はマストですが、それ以下の階層の市町村の選定は人口動態によって変わっていきます。

例えば2022年の調査で栃木県に割り当てられた世帯数は144で、宇都宮市96、小山市36、野木町(下都賀郡)12、の3自治体が選ばれました。静岡県に割り当てられた世帯数は204(3自治体)で、静岡市96、浜松市96、菊川市12、となっています。栃木県の調査世帯数144は近年変わっていませんが、静岡県は浜松市が政令市として調査される前(2007年)までは調査世帯数192で、浜松市は36でした。

9,000世帯をこうして割り当てるのは全国の世帯の状況を押しなべて知るためには適切な方法と考えられますが、各都市の傾向を推し量るのための調査数としてはちょっと微妙です。(繰り返しますが)筆者は統計の専門家ではないので詳細な説明は控えますが、各都市の傾向を示すものとして、これらの調査数ではある程度の誤差が生じる可能性を否定できません。
総務省もその点は承知していて、「対象世帯の少ない世帯区分についての集計結果や、購入頻度の少ない品目への支出額の数字などは、標本誤差が大きくなりがち」(家計調査に関するQ&A(回答)I-1 家計調査の結果の誤差はどのくらいですか?)と認めています。それらを少しでも緩和させるために、調査期間を二人以上の世帯は6か月、単身世帯は3か月として、順次調査世帯を切り替えるなどの方策を取っています(家計調査の概要 3 調査世帯の選定)。

前回、宇都宮市の8年分の結果を並べたのは、誤差が生じうる集計で4千円台(全国平均は2,300~2,400円程度)を出し続けていたその実力をお示ししたかったからなのです。そして更に2006・2007年と2年連続で5千円の大台を超えたのは決して外れ値ではなく何か特別な状態にあったのではないか、ということが考えられる訳です。

長々と細かいことを書き連ねましたが、申し上げたかったのは、家計調査における餃子支出額の都市別集計は、(元々ポテンシャルの高い市町村であれば)頑張ればそれなりの数字が反映されるものの不確定要素も潜んでおり、毎年一喜一憂するにはちょうどよい具合のゲーム性のあるランキングになってしまっているのではないか、ということです。言うまでもありませんが、総務省にそんな意図はまったくありません。これは我々外野が勝手に面白がっていることで、そのことは本稿の裏テーマでもあります。
つづく

【総務省参照サイト】
家計調査に関するQ&A(回答)
I-1 家計調査の結果の誤差はどのくらいですか?
https://www.stat.go.jp/data/kakei/qa-1.html#I1
家計調査年報(家計収支編)3 調査世帯の選定
https://www.stat.go.jp/data/kakei/1.html