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浜松市の区が再編されま(した)②(選挙区編)

前回、浜松市の区の再編についてその変遷を再編実施の半月前(2023/12/15)にご紹介しました。年が明け、7区が3区になることによってスッキリしたように見えますが、区割りの適正規模の設定というのはなかなか難しいものがあります。その微妙さ加減の面白い例として今回は浜松市の衆議院の選挙区をご紹介します。

衆議院の選挙区は2022年の年末に改訂されました。いわゆる一票の格差を極力解消させるために国勢調査の人口動態に合わせて調整するのですが、なるべく市区町村を分割しないようにするのが原則です。選挙区の改訂で静岡県内に大きな影響があったのは2002年(9から8区に1減)のものがあり、今回はそれから20年ぶりの変更でした。

この20年間に浜松市は周辺自治体を編入合併し(2005年)、政令指定都市(2007年)になるという大きな変化を遂げています。元々浜松市内の選挙区は2分されていた上に2005年の合併から2007年までの区制のない浜松市時代は指定範囲の表現がかなり煩雑で、区制が敷かれて多少整理されましたが、それでも選挙区の指定に「〇〇町、△△町、□□町、✕✕〇~△丁目…」という羅列が延々と続く表現が続いていました。

それが2022年の改定で非常にシンプルになりました。

静岡県第7区
・浜松市(西区、北区、浜北区、天竜区)
・湖西市

静岡県第8区
・浜松市(中区、東区、南区)

ところが、です。そのほぼ1年後に今回の区の再編が行われたため、また表現を改めなくてはならなくなりました。中央区が第7区と第8区で分断されてしまうのです。「中央区(旧西区と旧北区の地域)」(第7区)、「中央区(旧中区、旧東区、旧南区の地域)」(第8区)と表現すればそれほど面倒ではないのではないか、と思われるかもしれませんが、ここで問題になるのが前回話題にした三方原地区なのです。北区は三方原地区以外は浜名区となり、三方原地区のみが中央区に編入されています。この楔型に突出した地域を中央区にすると区の境界線の凸凹は解消されますし、地域間の合理性も鑑みられたのだと思われます。しかし行政区の再編にそれなりの時間がかったように、選挙区も一度決められたものは容易に変更はできません。

第7区については、北区の三方原地区以外と浜北区が浜名区になりましたので、浜松市の区域指定については「中央区(旧西区域、旧北区の三方原地区)、浜名区、天竜区」としなければなりません。また、三方原地区に「初生町、三方原町、東三方町、豊岡町、三幸町、大原町、根洗町」という注釈も欲しいところです。
第8区については、「中央区(旧中区、旧東区、旧南区域)」という表現でもよいですが、もし旧中区を「本庁管内」と表現する場合には「(三方原地区を除く)」と付けなければなりません。
そして、再編された区がこれから市民に定着してくると、今度は17年という微妙な期間使用してきた旧区の表現がいつまで通用するか、という問題が出てきます。「〇〇管内」という表現方法もありますが、ではその管内はどこを指すのか、と問われることを考えると、中央区内の選挙区の指定は最終的に第7区も第8区も「浜松市中央区(〇〇町、△△町、□□町、✕✕〇~△丁目…)」という表現にせざるを得なくなるかもしれません。

行政の効率化を目指す場合、適正な規模というものが想定されます。その適正化を求めて浜松市は区を再編した訳ですが、一票の格差を踏まえた選挙区の適正規模はまた別です。浜松市に限らず近年合併編入を実施した市は地域による人口密度の濃淡が激しく、そうした自治体の人口が過密傾向にある地域は選挙区を分断せざるを得ないのが現状です。

今回の浜松市の区の再編は比較的シンプルで分りやすい変更ではありましたが、別のレイヤーを重ねてみると違った側面が見えてくることもあるのです。
つづく

【参考】衆議院小選挙区の区割りの改定等について(浜松市)
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/senkan/20221130/kuwarikaitei.html